水平線と「成り行き」が導く真実:水島翔氏に学ぶ、執着を捨てたプロの撤退技術

水島 翔/FXトレーダー

はじめに

FXトレードにおいて、多くの投資家を悩ませるのが「エントリーのタイミング」です。教科書通りの「戻り」を待っている間に価格が次々と目標値へ到達してしまい、結局機会損失に終わる――こうした経験は、初心者から中級者まで共通の痛みと言えるでしょう。

今回フォーカスするのは、2024年7月4日のドル円相場を題材にした、水島翔氏による極めて実践的なトレード解説です。当時、相場は162円付近の歴史的な高値圏から下落へと転じる、非常にボラティリティの高い局面でした。

この記事では、動画の中で示された水平線を用いた環境認識の真髄と、常識を覆す「成り行きエントリー」の論理、そして何よりプロが最も重視する「負け方」の美学を紐解きます。単なる手法の解説に留まらず、マーケットの流動性と参加者心理を読み解く「プロの思考プロセス」を深く掘り下げていきましょう。

環境認識の徹底:フラクタル構造で読み解くシナリオ

水島氏のトレードの根幹にあるのは、徹底したマルチタイムフレーム(MTF)分析です。彼は場当たり的な判断を一切排除し、常にフラクタル構造(上位足の波の中に下位足の波が存在する構造)を意識したシナリオ構築を行います。

2024年7月4日の局面では、直前に75〜80 pipsの利益を積み上げた背景がありつつも、水島氏は冷静に以下のステップで環境を再定義しています。

  • 週足・日足のトレンド確認:長期的には依然として強い上昇トレンドを維持。
  • 4時間足の転換サイン:最高値の起点となった押し安値を、ローソク足の実体で明確に割り込んだことを確認。
  • 1時間足の水平線特定:意識されていた強力なサポートライン(水平線)を特定し、そこを割ることで下降の勢いが加速するシナリオを描く。

水島氏が強調するのは、「感情で動かず、事前に立てたシナリオに基づいて予約注文か成り行きかを決める」という冷徹なまでの規律です。特に4時間足レベルでの実体抜けは、中期的な目線の切り替えを正当化する強力な根拠となります。

常識を覆す「攻め」の成り行きエントリー

多くのトレーダーが「戻り売り」という言葉に縛られる中、水島氏は短期足(5分足・1分足)の動きから、あえて成り行きでの飛び乗りを選択することがあります。これは、強い下落局面では「戻しを待っても戻ってこない」という相場の特性を熟知しているからです。

水島氏は、独自のインジケーター「キャッチ・ザ・ウェーブ」で引かれた水平線と、1分足レベルでの**買座支え(サポート)**の強弱を天秤にかけます。

「ショートの場合、戻しを待っているとなかなか戻ってこないパターンが結構あるんで、抜けそうだなと思ったら一旦ショートでポジション持っちゃうっていうのもありです。」

この発言の裏には、期待値の高い局面で「まずはポジションを確保し、微細な違和感があれば即座に捨てる」という、リスク・リワードの非対称性を突いた戦略があります。1分足で高値更新に失敗し、再度安値を攻める動きを「抜けそう」な予兆として捉える。この嗅覚こそが、現場主義のプロの判断と言えるでしょう。

ポジションに「愛着」を持たない勇気

この動画の真の価値は、実は「エントリーの成功」ではなく「損切りの瞬発力」にあります。動画内で水島氏はショートを仕掛けますが、相場は予測に反して反発。1分足で引いた水平線を上抜けた瞬間、彼は迷うことなく数秒でポジションを閉じました。

トレーダーは一度ポジションを持つと、自分に都合の良い情報だけを集める確証バイアスや、費やした時間と労力に執着するサンクコストバイアスに陥りがちです。水島氏はこの心理的罠を「愛着」という言葉で厳しく戒めます。

「ポジションに愛着は持たずに、違うと思ったらすぐに切ってしまうっていうのを習慣づけて欲しいと思います。」

「下がる理由を無理やり探してしまう」自分を俯瞰し、1分足の抵抗帯を抜かれたという客観的事実のみに従う。この即時撤退が、致命傷を避け、次の利益を生むための資金とメンタルリソースを守るのです。

負けを次の利益に変えるシナリオの再構築

トレードが失敗に終わった後の振る舞いこそが、プロとアマを分ける分水嶺です。損切り直後に熱くなって反対方向へ仕掛ける「ドテン買い」は、根拠を欠いたギャンブルに過ぎません。

水島氏は、損切り後に価格が上昇しても「すぐには買わない」と断言します。一旦冷静になり、上位足の環境認識に立ち返って、なぜシナリオが外れたのか、市場はどのような新しいメッセージを発信しているのかを再考します。

  • 負けを「データ」として受け入れる。
  • 中長期的な視点を崩さず、再度優位性のある局面まで待機する。
  • 感情の揺れを排除し、ルーチンとしてのシナリオ構築を繰り返す。

たとえ一回のトレードがマイナスであっても、そのプロセスが精緻であれば、それは「正しい負け」です。水島氏の姿勢は、トレードを一過性の博打ではなく、永続的なビジネスとして捉えるプロの矜持を体現しています。

おわりに

FXで勝ち続けるとは、予測を100%当てることではありません。精緻な環境認識に基づき、チャンスと見れば成り行きで果敢に挑み、そして違和感があれば「愛着」を捨てて即座に逃げる――。このシンプルかつ困難な規律の徹底にあります。

水島翔氏の動画には、チャートの右側が見えない中で、いかにして恐怖と向き合い、客観的な判断を下すべきかというヒントが凝縮されています。

あなたは今、自分のポジションに「愛着」を持ってしまっていませんか? 損切りを単なる「失敗」ではなく「次の勝利への布石」へと昇華させるために。ぜひ、フル動画を通じて、その臨場感あふれる判断の瞬間を追体験してください。