はじめに
丹精込めて維持してきた愛車、特にそれが誰もが憧れるクラシックカーだとしたら、その別れは特別な意味を持ちます。人気YouTuberの水島翔氏が、まるで新車のように美しい「ハコスカ」を手放すことを決断しました。しかし、これは単なる車の売却話ではありません。彼のすべての選択に通底する、情熱と性能、そして資産価値を冷静に見極めるプラグマティズム。これは、彼の進化する価値観と、次に追いかけるべき夢を巡る、葛藤と決断の物語なのです。
なぜ、あの美しいハコスカを手放すのか
水島氏のハコスカは、単に「状態が良い」という言葉では表現しきれないほどのコンディションを誇ります。錆びやすいクラシックカーの泣き所である雨漏りを防ぐゴムシール類は新品に交換され、トランクを開ければ、交換されたばかりの燃料タンクが輝き、隅々までクリーンそのもの。ボディはおそらく一度すべて剥がされ、錆びた部分は切り取って新しい鉄板を溶接し直すフルレストアが施されているのでしょう。エンジンルームに目をやれば、職人の手仕事を感じさせる美しいエキゾーストマニホールドが鎮座しています。
これほどの愛情とコストが注がれた一台を手放す決断は、彼の新たな渇望と、彼ならではの哲学が交差した結果でした。一つは、この車が本物のGT-Rではなく「GT-R仕様」であるという点。そしてもう一つが、彼の現在のラインナップにはない「ターボ車」への強い憧れです。しかし、この決断の根底には、衝動ではない、彼のモノ選びの哲学が深く関わっています。
結局手放すって言っても僕はさ使った分くらいはさメべりしててもいいけど基本やっぱあんまり価値の落ちないものとかさ価値の上がっていくようなものを選んで買ってるつもりだから
愛車を単なる消費財としてではなく、価値を維持・向上させる資産として捉える。この冷静な判断が、次の夢へと向かうための原動力となっているのです。
ターボ車への渇望
現在の彼のカーラインナップの多くは、自然吸気(NA)エンジンです。そんな中、水島氏の中でターボチャージャーがもたらす官能的な加速への渇望が日に日に強くなっていました。
彼はその魅力を、熱っぽく語ります。彼にとってターボとは、一種の機械的な魔法。排気ガスの力でタービンを回し、空気を強制的にエンジンに送り込むことで、2.6リッターのエンジンがブースト圧次第ではまるで5.2リッター級のパワーを発揮する。彼が今まさに求めているのは、この爆発的でオンデマンドなパワーが生み出す、中速域から高速域にかけての「ジェットスキーみたいな加速」。NAエンジンとは次元の違う、あの独特の伸びこそが、彼を新たなステージへと駆り立てているのです。
究極の選択。「悪魔のZ」か、積年の夢か
ハコスカの次に彼が見据えるのは、二つの全く異なる魅力を持つドリームカー。その選択は、日本のカスタム文化の粋と、アメリカンマッスルの魂という、クラシックカーにおける究極のジレンマを体現しています。
一つ目の候補は、漫画『湾岸ミッドナイト』で「悪魔のZ」としてあまりにも有名なS30Z。彼の計画は、古き良き日本のレストモッドの未来形です。程度の良いS30Zのボディを手に入れ、現代のGT-Rのエンジンを換装(スワップ)。強力なターボを組み込み、クラシックなラインとモダンなパワーを融合させた、唯一無二のマシンを創り上げたいと考えています。
そしてもう一つの候補が、1969年式のマスタング。これは彼が10代の頃からずっと焦がれてきた、積年の夢そのものです。
興味深いのは、この二台の価格帯がほぼ同じであるという点。彼はこの究極の選択について、本音を漏らします。
でも値段一緒だったら正直マスタングかなって思うんだよね
最新技術を注ぎ込む未来志向のプロジェクトカーか、少年時代から続くノスタルジックな夢か。彼の心は大きく揺れ動いています。
モノ選びに宿る、彼ならではの哲学
彼の選択は、単なる車選びに留まりません。象徴的なのがクルーザーの遍歴です。16歳の時に15万円のボートから始まり、2500万円、1億1000万円とステップアップ。そして次は2億円の船を計画していると言います。
この一歩ずつ夢を大きくしていくプロセスは、ハコスカの売却に適用された資産価値というロジックの、いわば感情的な対をなすものです。彼にとって、モノを所有する旅は、その資産価値と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのです。彼は「いきなりさ登り詰めると楽しくないじゃん。徐々にこう持ってくっていう」と語ります。
一足飛びに頂点を極めるのではなく、一歩ずつ夢を叶えていくプロセスそのものを楽しむ。これは車や船に限らず、彼の人生の目標に対するアプローチそのもの。彼の車選びは、情熱と価値を見極める冷静な視点を両立させながら、自身の人生のステップを刻んでいく行為なのです。
おわりに
美しく仕上げられたハコスカとの別れは、一抹の寂しさを感じさせます。しかしそれは同時に、新たな夢へと向かうエキサイティングな物語の始まりでもあります。カスタムの極致を目指す「S30Z」か、少年時代の夢「マスタング」か。彼の次なる一手は、単なる車種選択ではなく、彼がどのような人生のステップを次に踏むのかを示す、重要なマイルストーンとなるでしょう。
この決断の裏側にある彼の熱い想いと、ハコスカが奏でる最後の美しいエンジン音を、ぜひ動画本編で確かめてみてください。

