春の足音が聞こえ始めると、我々ドライバーにとって避けては通れない「儀式」がやってきます。そう、タイヤの履き替えです。多くのオーナーがディーラーやショップに委ねるこの作業ですが、ガレージという名の聖域を持つ者にとって、それは愛車との対話を楽しむ至福のひとときでもあります。
今回は、FXトレーダーとして、そして卓越した審美眼を持つカーコレクターとして知られる水島翔氏のガレージライフに密着。最新のランドクルーザー300(以下、ランクル300)のメンテナンス風景から、予期せぬ自然の悪戯、そして彼のルーツを物語る1台のバイクまで。単なる作業動画の枠を超えた、人生の機微に触れるドキュメンタリーをお届けします。
「教科書通り」の誇り、そしてDIYを選ぶ理由
水島氏のガレージワークは、まず作業スペースを「整える」ことから始まります。愛車ハコスカをあえて斜めに、まるで展示品のように配置してスペースを確保する。その所作一つひとつに、機能美と遊び心を重んじるライフスタイルが滲み出ます。
彼が多忙な合間を縫って自ら作業を行うのは、単に「ショップに持ち込むのが面倒だから」という飾らない本音もありますが、それ以上に「これくらいのメンテナンスは自分で行うべき」という、オーナーとしての責任感と愛車への理解を深める姿勢があるからです。
扱うのは、4本で約40万円、1本10万円もする最高級のタイヤ。 「タイヤ交換の教科書みたいな動画になりました」 本人がそう語る通り、タイヤの摩耗具合を確認して前後を入れ替えるローテーションや、回転方向の有無のチェックなど、その工程は極めて緻密。高級車を扱う緊張感と、プロフェッショナルな知見が交差する瞬間です。
タイヤ交換の教科書みたいな動画になりました。
初心者こそ真似るべき、安全と正確性のディテール
水島氏が「教科書通り」と称する理由は、徹底した安全管理とテクニカルなこだわりにあります。
- 二段構えの安全確保:ジャッキアップだけで済ませず、必ず「馬(ジャッキスタンド)」をかける。万が一の落下を防ぐこの一手間こそが、プロのガレージワークです。
- ボルトの「手回し」の鉄則:いきなりインパクトレンチを使わず、最初の1〜2周は必ず手で回してネジ山を合わせる。これを怠るとネジ山を「舐める(破損させる)」原因になるという、初心者が見落としがちな急所を丁寧に解説。
- 厳格なトルク管理:対角線上の順番で締め付け、最後はトルクレンチを使用してランクル300の規定値「131 N・m」で正確にロック。
- 最終の空気圧チェック:指定値(2.3)に合わせ、走行の安全性を担保します。
これが正解です。カチってなるまでね。
「感覚」に頼らず、数値と音で正解を確認する。この徹底したロジカルな作業こそ、彼のトレーダーとしての顔にも通じる「勝利へのルーティン」なのかもしれません。
痛いくらいの雪が教えてくれた「人生のハプニング」
しかし、ドラマは唐突に訪れます。作業が佳境に入った頃、3月末とは思えない激しい雪がガレージを襲いました。それは優雅な粉雪ではなく、肌に当たれば痛みを感じるほどの雹(ひょう)のような勢い。ガレージの外は一瞬にして白く染まっていきます。
翌日に金沢への移動を控えていた水島氏は、ここで即座に決断を下します。「今、交換したばかりの夏タイヤを、再びスタッドレスに戻す」。
せっかくの労力が水の泡となる瞬間ですが、彼は一切の迷いを見せません。安全という絶対的な価値のために、プライドも効率も捨てる。そして、予定通りにいかないこの状況を、彼は穏やかに笑い飛ばしました。
なんか人生を表すように、ま、こういうこともあるってことで。
皮肉なことに、スタッドレスに戻し終えた瞬間に雪は止み、空は晴れ渡りました。その徒労感すらも「ハプニングを楽しむ余裕」として受け入れる。それこそが、真のドライバーが持つべき資質であることを我々に教えてくれます。
月給の大部分を注ぎ込んだ、24年前の「熱狂」の記憶
タイヤ交換の手を休め、水島氏が目を向けたのはガレージの片隅に佇むヤマハ・TW200でした。フェラーリ488やハイラックス、ハコスカといった豪華なラインナップの中で、その小さなバイクは独特のオーラを放っています。
驚くべきは、彼が16歳の時にローンを組んで手に入れて以来、24年間も大切に持ち続けているという事実です。当時の彼の月給は32万円。それに対し、このバイク(カスタム込みで約100万円)とジェットスキーのローン支払いは月々25万円。若さゆえの無謀とも言える情熱が、今の彼の礎となっているのです。
24年前のタイヤをそのままに、今もガソリンの匂いを漂わせるTW200。最新の高級車を乗りこなす一方で、原点である1台に愛情を注ぎ続ける。この一貫した「モノに対する敬意」こそが、彼のライフスタイルの本質です。
おわりに
天候という不可抗力によって、タイヤ交換作業は「元に戻す」という結末を迎えました。しかし、そこにはメンテナンスの知識以上の、人生における大切なヒントが詰まっていました。
トラブルを嘆くのではなく、それさえも「人生の取れ高」として楽しむ余裕。そして、古いモノを慈しみ、安全に対して妥協しない誠実さ。
フル動画を視聴して、あなたにとってどのシーンが最も印象に残るか、ぜひ確かめてみてください。そこには、明日からのカーライフを少しだけ豊かにするエッセンスが散りばめられているはずです。

