はじめに
「トレンドは友達(The trend is your friend)」—FXを始めたトレーダーなら、誰もが耳にタコができるほど聞かされる言葉です。しかし、この「友達」に裏切られ、痛い目に遭った経験はありませんか?トレンドの終盤で飛び乗ってしまい、買った瞬間が天井、売った瞬間が底だった…そんな経験は、トレーダーなら誰しもが通る道です。私も数えきれないほど経験してきました。
なぜ、トレンドフォローはこれほどまでに難しいのでしょうか。それは、ほとんどの人がトレンドが「なぜ」発生するのか、その血の通ったメカニズムを理解していないからです。教科書は「高値と安値の切り上がり」と教えてくれますが、それでは不十分です。
今回ご紹介する動画は、私が長年マーケットで見てきた「トレンドの不都合な真実」を完璧に言語化してくれています。この記事ではその核心に迫ります。トレンドの正体とは何か。それを理解することは、単なるテクニックの改善ではありません。チャートの向こう側にいる人々の心理を読み解き、勝ち組トレーダーの思考へとシフトするための、避けては通れない道なのです。
トレンドの正体は「パニック状態」である
上昇トレンドは「買いたい人が売りたい人より多いから」発生する。これは一見正しそうですが、本質を見誤っています。冷静な市場参加者の行動原理は「安く買って、高く売る」です。価格が上がるほど、本来なら新規の買い手は減っていくはず。ではなぜ、不利な価格でも相場は一方的に動き続けるのでしょうか。
その答えは、市場参加者の一部が**「不利な価格でも買わざるを得ない」状況に追い込まれている**からです。例えば、売りポジションを持っていたトレーダーが価格の急騰に巻き込まれ、含み損が雪だるま式に膨らんでいく。「これ以上は耐えられない、どんな価格でもいいから今すぐ買い戻して逃げなければ!」—この悲鳴こそが、トレンドを突き動かすエネルギーの源泉です。
トレンドとは、一部の市場参加者が冷静な判断力を失い、損失への恐怖から取引を強制されている異常事態なのです。だからこそ、トレンド相場は市場全体の2〜3割しか発生しません。残りの7〜8割は、参加者が比較的冷静に「安いところで買い、高いところで売る」を繰り返すレンジ相場です。トレンドは、この正常な心理状態が壊れた時にだけ現れる、特殊な現象なのです。動画では、この本質を、これ以上ないほど的確な一言で表現しています。
トレンドとは パニック状態
トレンドを動かす本当の燃料とは何か
では、その「パニック」を誘発する最大の燃料とは何でしょうか。それは、**負けているトレーダーたちの損切り注文(ストップロス)**です。FXでは個人トレーダーの約9割が負けると言われています。この数字は伊達ではありません。
はっきり言いましょう。トレンドフォローで利益を上げるということは、その裏側で起きている膨大な損切り、つまり他人の痛みをエネルギーに変える行為です。あなたの利益は、パニックに陥り、ポジションを強制的に清算させられたトレーダーからの富の移転に他なりません。
この視点を持つと、チャートの見え方が一変します。単なるローソク足の連なりではなく、「どこに損切りという名の燃料が溜まっているか」「どの価格帯を突破すれば、その燃料に火がつき、爆発的な動きが生まれるか」という、エネルギーの分布図として見えてくるはずです。
「負け組」の損切りが溜まる場所こそ、トレンドの始点
この理論を実践に移す鍵は、「負け組トレーダーの損切りがどこに集中しているか」を見抜くことです。その場所こそが、次のトレンドの起点となります。動画が指摘するように、その最有力候補は**「水平線ブレイク」**のポイントです。何度も止められた高値や安値のラインには、大量の損切り注文が「地雷」のように埋設されています。
このメカニズムを、ダウ理論のトレンド3段階と組み合わせると、より鮮明なストーリーが見えてきます。
- 先行期:月足や週足といった超長期の節目を見て動く、ごく一部の大口投資家が仕掛ける段階。
- 追随期:トレンドの発生をテクニカルに確認し、素早く追従する腕利きのトレーダーたちが参入する段階。
- 利食い期:トレンドが誰の目にも明らかになり、乗り遅れた個人トレーダーがようやく参入してくる最終段階。
ここからが最も重要です。新しい強力なトレンドは、多くの場合、前のトレンドの「利食い期」に参加したトレーダーたち、つまり「未来の燃料」を刈り取ることで始まります。
具体的な流れを追ってみましょう。
- 長く続いた下降トレンドが勢いを失い、底値圏で揉み合い始めます。
- 乗り遅れた「利食い期」の個人トレーダーが、「まだ下がるはずだ」と焦ってショート(売り)で飛び乗ります。
- 彼らは、損切り注文(=買い注文)を、直近の戻り高値(水平線)の少し上に置きます。これにより、その水平線の上には、巨大な買い注文のプールが出来上がります。
- 先行期や追随期のスマートマネーは、下降トレンドの終焉を察知し、静かに買い始め、価格をその「燃料プール」へと押し上げていきます。
- そして価格が水平線をブレイクした瞬間、ワイヤーが切られます。溜まっていた損切り注文が一斉に発動し、連鎖的な強制買いが発生。このパニック的な買いこそが、新しい上昇トレンドを巻き起こす爆発的な推進力となるのです。
さらに、このポイントは、負け組の損切りが執行されるだけでなく、次のトレンドを狙う賢い「追随期」のトレーダーたちが、ブレイクアウトで新規に買いを入れる絶好のポイントでもあります。つまり、「敗者の強制的な買い」と「勝者の積極的な買い」が合流するパーフェクトストーム。これが、水平線ブレイクがこれほどまでに強力な理由です。
おわりに
トレンドフォローの極意とは、チャートに引かれた線の傾きを追いかけることではありません。その裏側で繰り広げられる「誰が、どこでパニックに陥っているのか」という、人間の欲望と恐怖の物語を読み解く力です。
チャートの線を見ていたトレーダーが、その線を動かす人々の「金融的な痛み」を見えるようになった時、初めてその他大勢から抜け出すことができます。それこそが、9割の負け組と1割の勝ち組を隔てる、最も高く、そして最も重要な壁なのです。
この視点の転換は、あなたのトレードを根底から変える力を持っています。より具体的なチャート事例を用いた詳細な解説は、ぜひ元となった動画本編でご確認ください。あなたのトレードを新たな次元へと引き上げる、深い気づきがそこにあるはずです。

