はじめに
ふとした瞬間の衝動買いや、長い歴史を持つモノに心を奪われた経験はありませんか?今回ご紹介するのは、まさにそんな衝動と偶然が織りなす、一台の車をめぐる物語。人気YouTuber、水島翔さんのチャンネルにアップされた一本の動画が、多くの車好きの心を鷲掴みにしています。テーマは、なんと100年前に製造されたフォード「モデルT」の納車。しかし、これは博物館に静かに佇む展示品ではありません。見た目からは想像もつかない咆哮をあげる心臓部を持ち、驚くべきストーリーを秘めた、今もなお現役で走り続けるマシンです。この動画を観れば、なぜこの車が人々の心をこれほどまでに惹きつけるのか、その理由がきっとわかるはずです。
車の歴史そのもの、通称「Tバケ」の正体
動画に登場するのは、1923年式のフォード「モデルT」。日本では親しみを込めて「Tバケ(T-Bucket)」と呼ばれています。この車は、ヘンリー・フォードが世界で初めて大量生産方式を導入し、それまで富裕層の乗り物だった自動車を一般大衆の手に届けた、まさに歴史的な一台。専門家のなおくんが語るように、現代を走るすべての車の「ご先祖様」なのです。動画の中で語られた、この車の本質を的確に表す比喩が最高にクールでした。
僕 は 犬 犬 で 言う たら 狼 や と 思っ て ます
すべての車が改良を重ねられた「犬」だとすれば、モデルTはその原種である「狼」。この言葉に、コレクターである翔さんも「じゃあもうこれの先祖みたいなもんでしょ」「もう全部の祖です」と深く頷きます。彼のガレージに並ぶ数々の名車たちの、そのすべての原点がやってきた瞬間でした。
ただし、この一台はただのレストア車ではありません。正確には「Tバケット」というホットロッドカルチャーから生まれたカスタムスタイル。100年前の本物のフレームやグリルを土台に、現代のパワフルなエンジンと新しいファイバーグラス製のボディを組み合わせたもの。つまり、歴史の魂はそのままに、現代の道を安心して駆け抜けられるように作られた、「乗れる歴史遺産」なのです。
見た目と裏腹のパワフルな心臓部
この車の最大の魅力は、そのクラシックな見た目と、内に秘めた荒々しい性能とのギャップでしょう。その心臓部には、なんとコルベットなどにも搭載される5700ccもの大排気量エンジンが鎮座。これは「セルシオ2台分ぐらい」に相当する大きさだというから驚きです。それを、わずか1トンほどの羽のように軽いボディに搭載しているのですから、その走りはまさに野獣。動画内でアクセルを踏み込んだ瞬間に轟く咆哮と、軽々と加速していく様子は圧巻です。
さらに驚くべきは、専門家のなおくんが試乗後に語った「このエンジン、当たりだね」という一言。ただパワフルなだけでなく、数ある同じエンジンの中でも特に調子の良い個体だったというのです。この偶然もまた、この車の持つ不思議な魅力を物語っています。翔さんは、このじゃじゃ馬を琵琶湖の別荘で走らせる計画を立てており、美しい景色の中を疾走する姿を想像するだけでワクワクします。
「悩む人は買わない」—すべては5分の電話から
この車との出会いは、もはや運命の悪戯としか言いようがありません。話の始まりは、翔さんでもなおくんでもなく、第三者の人物からの一本の電話でした。「100年前の車を買うんだけど、一緒に買ってLAで走ろうよ」。この誘いに、翔さんは値段すら聞かずに即決。しかし、いざLAに行ってみると、その誘ってきた張本人が現れなかったのです。
残されたのは、その時が初対面だった翔さんと、車の専門家であるなおくん。こうして、二人は LAで偶然にも共に過ごすことになり、このTバケの物語が始まりました。まさに、来なかった彼が「僕となお君を繋いでくれた」と語られる、不思議な縁。わずか5分の電話から始まったこの衝動的な決断が、最高の出会いと最高の一台をもたらしたのです。動画で語られるこの言葉には、そんな背景もあって一層の重みがあります。
悩む人こんな車買わないよ
フェラーリよりも注目される、その意外な魅力
Tバケの面白さは、性能や歴史だけではありません。動画によると、この車はフェラーリやランボルギーニといった現代のスーパーカーよりも、街で圧倒的に多くのポジティブな注目を集めるそうです。小さな子供からお年寄りまで、誰もが笑顔で手を振ってくれるというのです。スーパーカーが放つ近寄りがたいオーラとは対照的に、Tバケには「ディズニーランドにありそう」な、誰もを笑顔にする不思議な力があります。
もはや単なる乗り物ではなく、「リビングに飾れるアート作品」であり、人と人を繋ぐ「コミュニケーションツール」。オリジナルのモデルに無かったという理由でシートベルトの装着義務がないなど、100年前のルールがそのまま適用されるユニークさも魅力です。
おわりに
深い歴史を持ち、見た目とは裏腹のパワーを秘め、そして偶然と衝動的な決断から生まれた一台の「Tバケ」。この動画は、最新技術が詰まった現代の車だけが「楽しい車」のすべてではないことを教えてくれます。完璧に調教された現代の「犬」たちに囲まれる時代だからこそ、荒々しく予測不能な原種の「狼」を乗りこなすスリルに、私たちは心を奪われるのかもしれません。
動画本編では、ここで紹介しきれなかった魅力や、一度聞いたら忘れられないほどのエンジン音を体感することができます。ぜひ、その目で、耳で、この100年前の狼の物語を体験してみてください。
動画本編も、ぜひご覧ください。

