はじめに
FXトレーダーであれば、「感情を排し、明確なルールのみで取引を完結させたい」と一度は考えたことがあるでしょう。その理想に迫る一つの解を提示してくれる書籍解説動画があります。
今回取り上げるのは、「トレーダー研究所」を主宰し、YouTubeでもトレード実践を発信しているHiro氏の著書『どシンプルFX』のレビュー動画です。動画では、書籍の核となる**「3年連続でプラス収支を達成した、完全無裁量のトレード手法」**が詳細に解説されています。曖昧な判断を一切排除した、論理的でシステマティックなトレードアプローチの核心に触れる絶好の機会と言えるでしょう。
「システムトレード」が持つ、本当の魅力
動画ではまず、システムトレードの核心的な魅力が解説されています。書籍の著者はシステムトレードと裁量トレードを対立概念と捉えるのではなく、それぞれの強みを活かす視点を重視していると紹介されています。動画で語られるシステムトレードの主な利点は、以下の通りです。
- 曖昧さがないロジック: すべてのルールが具体的な数値や条件で定義されているため、判断の余地がありません。
- 完全な再現性: 個人のスキルや解釈に依存せず、誰が実行しても全く同じトレードを再現できます。
- メンタルと時間の解放: エントリーや決済の判断に伴う精神的負担が軽減され、チャートに張り付く時間からも解放されます。
その一方で、システムトレードには明確な弱点も存在します。動画の解説によれば、システムは「現在の相場がトレンドか、ノン-トレンドか」といった大局的な環境認識が苦手です。また、多くの裁量トレーダーが重要視する水平線やトレンドラインを用いたライン分析といった、柔軟な分析手法を組み込むことが困難である点もデメリットとして挙げられています。
3年連続プラスを記録した手法「クリッパーM」の核心
本書と動画レビューで中心的に扱われるのが、トレード手法「クリッパーM」です。そのロジックは驚くほどシンプルでありながら、非常に合理的です。
- この手法は、ドル円の1時間足を対象としたデイトレード戦略です。
- 基本的な思想は、**「ロンドン市場の時間帯はトレンドが継続しやすい」**という統計的優位性を利用することにあります。
- ルールは明快です。3本の移動平均線が特定の条件(パーフェクトオーダー)を満たした状態で、ロンドン市場のオープンと同時にエントリーし、ロンドンフィックス(市場の終わり)で決済します。この間のポジション保有時間は約8時間となります。
このアプローチにより、トレンドフォロー戦略を**「完全無裁量」**で実行できるため、誰にでも実践可能で再現性の高い手法となっています。
「完全無裁量」でこの成績は驚き。具体的な数値データ
動画では、「クリッパーM」の2016年から2018年におけるバックテスト成績が公開されています。純粋な機械的ルールのみでこのパフォーマンスを達成している点は、戦略アナリストの視点から見ても非常に優れていると評価できます。
- プロフィットファクター: 1.54(損益分岐点である1.0を大きく上回る、機械的戦略として非常に強力な収益性指標)
- 勝率: 54.55%
- リスクリワードレシオ: 1.27(典型的な「損小利大」モデルであり、1トレードあたりの平均利益が平均損失を上回ることを示す)
- 最大ドローダウン: 11.25%(動画の解説者も「非常に優良な数字」と評価する、管理可能なリスク範囲)
特筆すべきは、これらの数値が示す優れたバランスです。50%を超える勝率と1を上回るリスクリワードレシオの相乗効果が、1.54という高いプロフィットファクターを生み出しています。これにより、極端に高い勝率を維持する必要がなく、トレーダーの心理的負担を軽減する効果も期待できます。
システムの弱点を「裁量」で補う、賢いアプローチ
この戦略はトレンド相場に強い一方で、その弱点はノン-トレンド相場やトレンドの最終局面にあります。書籍と動画では、この弱点をシンプルな裁量判断で補い、パフォーマンスを向上させる賢いアプローチが複数紹介されています。
- MACDダイバージェンスの活用: トレンドの勢いが衰える終盤で発生しやすいダイバージェンスを認識し、損失につながりやすいエントリーをフィルタリングする方法。
- トレーリングストップの導入: トレンドの初期段階を捉えた場合、ロンドンフィックスで画一的に決済するのではなく、トレーリングストップを用いて利益を最大限に伸ばすアプローチ。
- システムのON/OFF判断: ドル円が数ヶ月にわたる長期的なレンジ相場に入るなど、明らかにシステムの苦手な相場環境では、戦略の稼働を一時的に停止したり、ロットを落としたりする大局的な判断。
これらの改善策は、先に述べたシステムトレードの弱点(環境認識や柔軟な分析ができない点)を、まさに人間のトレーダーが補うという発想に基づいています。動画の解説者が深く感銘を受けたと語る、書籍の結論部分がこのアプローチの哲学を端的に示しています。それは、「人間トレーダーはどこで優位性を発揮すべきか」という問いへの、力強い答えです。
個人トレーダーがトレードする利点として…ライン分析、水平線だったりトレンドラインだったり、そうしたところの分析ができるといった点が強みで、そこはまだシステムにもできない人間の強みだ。
おわりに
今回ご紹介した動画は、ロジックが完全に開示されたトレード戦略を深く理解できる、非常に価値のある内容です。曖昧さを排したルールが、いかにして統計的な優位性を利益に変えるのか。その思考プロセスは、システムトレーダーだけでなく、すべての裁量トレーダーにとっても有益なヒントとなるでしょう。
ぜひ動画本編で、チャート上での具体的な動きも確認してみてください。

