なぜ、新車同然のフェラーリF8を手放すのか? オーナーが語る「資産」と「価値観」の深い話

水島 翔/FXトレーダー

はじめに

わずか3日前、FXトレーダーとして知られる水島翔氏は、ひとつの大きな決断を下しました。3年前にオーダーメイドで手に入れ、心から納車を喜んだ夢のスーパーカー、フェラーリF8を売却するというのです。多くの人が「何か経済的な問題でも?」と勘ぐるかもしれませんが、理由はまったく異なります。

では、なぜ彼は新車同然の愛車を手放すのでしょうか? しかも、その売却の舞台として選んだのは、自身のYouTubeチャンネル。これは単なる車の売却話ではありません。一人の男性が自らの価値観の変化と向き合い、その過程をリアルタイムで公開するという、現代ならではの示唆に富んだ物語なのです。この記事では、彼の深い哲学に迫ります。

衝撃の決断、その「本当の理由」

この決断を理解する鍵は、水島氏が自身に課した、ある一つの厳しいルールにあります。それは、「ローンを組んでいて、なおかつ収入を生まないのに維持費がかかる所有物を最小限にする」というもの。

レバレッジをかけて手に入れた資産は、不動産のように収益を生むべきだ——。そう考えるようになった彼にとって、ローンが残るF8の存在は、新たな哲学に反するものとなりました。その変化は、単なるルール設定にとどまらない、強い信念に裏打ちされています。

「それが許せないもう自分の中」

彼のこの言葉からは、自分自身に対する厳格な姿勢がうかがえます。F8の売却で得た資金は、もう一台の愛車であるランボルギーニのローン返済に充て、資産をシンプルにすることで、彼は自らの哲学を実行に移そうとしているのです。所有物すべてを見直すという彼の決意は、この一言に集約されています。

これを長期的に考えた時にいる、いらないを自分の中ではっきりしようと思ったの。車だけじゃなくて全てのものに対して。

オーナーのこだわりが詰まった「作品」

この合理的な決断を、より一層興味深く、そして切なくさせているのは、売却対象のF8が決してありふれた一台ではないという事実です。むしろ、それは水島氏自身の美学が細部にまで反映された「自信作」と呼ぶべきものです。

まず驚くべきは、3年間でわずか1146kmという走行距離。売却を決意したこの3日間でようやく乗り始めた、という皮肉なエピソードが、そのコンディションの良さを物語っています。さらに、この車には彼の情熱を物語る、非常に高価なカスタムオプションが惜しみなく投入されています。

  • 外装色: 特別塗装色「ロッソフォーミュラ1」(440万円のオプション)
  • ホイール: フルカーボンファイバー製ホイール(440万円のオプション)
  • インテリア: 全体をアルカンターラで統一(200〜300万円のオプション)
  • カーボンパーツ: 内外装の至るところにフルで装着(リアディフューザーだけで200万円)

特に彼のこだわりが表れているのが、色の統一感です。フェラーリの伝統的なイメージである「赤・黄・カーボンブラック」をテーマに、外装のアクセントやブレーキキャリパーから、内装のステッチに至るまで、すべてをこの3色でまとめ上げました。これは単なる乗り物ではなく、彼の美意識の結晶なのです。そしてこの「作品」は、見た目のユニークさだけでなく、自動車史においても特別な位置を占めています。

これが最後の「純血V8フェラーリ」

自動車愛好家にとって、このF8は特別な意味を持つモデルです。F8は、ハイブリッドシステムを搭載しない、純粋なV8エンジンを積んだ最後のフェラーリと言われています。後継モデルの296などがV6ハイブリッドエンジンに移行したため、F8は将来のクラシックカーとして価値が高まる可能性を秘めた、純粋主義者にとっては垂涎の一台なのです。

スーパーカーがハイブリッド化していく時代の流れについて、水島氏はこう語ります。

やっぱ物足りないと思うよ、フェラーリ付きの人にしちゃやっぱこのエンジン音がなくなるわけだからさ。

この言葉は、F8が持つ金銭的な価値だけでなく、その咆哮に宿る歴史的・感情的な価値を浮き彫りにします。だからこそ、それを手放すという彼の決断は、一層重みを持って響くのです。

「価値」を未来へ繋ぐ——物に執着しない哲学

この決断の核心には、物質的な所有物への感傷的な愛着よりも、その「価値」をいかに未来へ繋ぐかを重視する、彼の哲学があります。

やっぱ物に未練がないからさ。…それだけの金額の価値が自分にとってあるかって言うと、もっと有益な使い方ができるなっていうの。

彼のロジックは明快です。価値が残る資産だからこそ、その価値を現在の目標にとってより有益なものに変換できる、と考えているのです。しかし、それは単なる資産の組み換えではありません。彼の視線は、もっと永続的な価値へと向けられています。

彼は、最新のスーパーカーには「なんか入れ替えてかなきゃいけない感じするじゃん」と感じる一方、1990年代のクラシックカー「フェラーリ 512 TR」のような車は「ずっと持っときたい」と語ります。これは、彼の価値観の根本的なシフトを象徴しています。次々と新しいモデルに乗り換えるという消費的なサイクルから抜け出し、時代を超えて愛せる、永続的な価値を持つ資産を求める姿勢への転換です。F8の売却は、その新たな哲学への第一歩なのです。

そして彼は、次のオーナーには、この車をガレージに飾るコレクターではなく、純粋に運転を楽しんでくれる人であってほしいと願っています。

おわりに

一台のフェラーリ売却の話は、いつしか、富や所有、そして人生の優先順位についての深くパーソナルな物語へと変わっていきました。水島氏の動画は、単なる車の紹介映像ではありません。一人の人間が自身の価値観と向き合い、変化していく様子を捉え、さらにはその決断をYouTube上での売却という形で実行する、稀有なドキュメンタリーです。

彼の率直な言葉と、息をのむほど美しい「自信作」の姿は、私たちに「本当に大切なものは何か」を問いかけてきます。

動画の全編を観て、あなたは何を感じるか、ぜひ確かめてみてください。