水平線一本で相場の深淵を読み解く:注文が集中する「起点」とプロが描くシナリオの全貌

水島 翔/FXトレーダー

はじめに

FXトレードという荒波の中で、多くのトレーダーが「どこでエントリーすればいいのか」という出口のない迷路に迷い込んでいます。チャートを凝視し、複雑なインジケーターを重ねても、確信を持って引き金を引けない。そんな経験は、誰しもが通る道かもしれません。しかし、相場の本質は驚くほどシンプルで、かつ論理的な構造によって成り立っています。

投資家・水島翔氏が説くのは、迷いを一掃し、トレードを「予測」から「確信」へと変えるための思考プロセスです。その中心にあるのは、時代に左右されない水平線ダウ理論。本記事では、動画の内容を深く掘り下げ、なぜプロの視界はそれほどまでにクリアなのか、その知的で洗練された戦略を解き明かしていきます。

環境認識の基礎となる水平線の威力

トレードの成否を分けるのは、エントリーの瞬間よりも前の「環境認識」にあります。水島氏は、まず上位足(日足・4時間足)で引いた水平線が、相場における絶対的な「北極星」になると断言します。

動画の中で象徴的なのは、ドル円(USD/JPY)の分析です。2023年5月初頭、ゴールデンウィーク期間中の相場において、米国雇用統計(NFP)という巨大なファンダメンタルズ要因が重なりました。しかし、結果として価格の急上昇をピタリと止めたのは、他でもない「日足レベルで引かれた一本の水平線」でした。

過去に引いた線が、時を経て「レジサポ転換(ロールリバーサル)」を起こす。この事実は、相場がランダムな動きではなく、市場参加者の記憶の集積であることを物語っています。水島氏はこう述べています。

「こうやって過去に自分が引いた水平線がしっかり機能しているという事実を知ることで、さらに自信を持ったトレードをできるようになってくる」

ダウ理論に基づき、高値と安値の推移から「目線」を固定する。そこに上位足の水平線を重ねることで、今が「買い」と「売り」のどちらにバイアスがかかっているのかを、冷徹なまでに客観的に判断できるようになるのです。

注文が集中する急上昇と急落の起点

相場には、強力な磁力を持つポイントが存在します。それが、価格の**「急上昇の起点」や「急落の起点」**です。なぜ、これらの場所で価格は止まり、あるいは反発するのでしょうか。

その理由は、そこに「市場の未決済注文」や「機関投資家の意図」が凝縮されているからです。急激な値動きが始まった場所は、いわば戦いの火蓋が切られた場所。そこに戻ってきた価格は、再び同じ方向への注文を誘発するか、あるいは逆方向への強い反発を招きます。水島氏は、1時間足や4時間足でこの「波の始まりと終わり」を見極めることの重要性を説いています。

単なる逆張りではなく、こうした「起点」に引き寄せられた際の挙動を観察すること。例えば、水平線付近での押し目買いや戻り売りを検討する際、下位足での細かなチャートパターンやオシレーターの反応を組み合わせる。この「多角的な視点」こそが、裁量トレードの醍醐味であり、無機質なチャートに命を吹き込むプロセスなのです。

2つのエントリールールとその使い分け

水島氏が提示するエントリールールは、極めて論理的かつ実践的です。彼は「引きつけてのエントリー」と「ブレイクアウト」という、性質の異なる2つのアプローチを状況に応じて使い分けています。

  • 引きつけてのエントリー 意識される水平線まで価格が戻るのを待つ手法です。この最大の利点は、損切りを極めて浅く設定できること。リスクリワードを最適化できる反面、エントリー直後はローカルな勢いに逆らうような形(逆張り的な感覚)になるため、一時的な含み損に耐える精神的な規律が求められます。
  • ブレイクアウト 節目のラインを突き抜けた瞬間の勢いに乗る手法です。水島氏はこの手法の強みを次のように表現しています。

「エントリした瞬間に含み損を抱えにくいのはそのブレイクアウトですね。ブレイクした瞬間のパワーを使ってエントリーしていくので」

含み損の時間が短く、精神的なストレスは少ない一方で、飛び乗りのリスクを伴います。これらを機械的に選ぶのではなく、今の相場が「パワーを溜めているのか」「既に放たれているのか」を読み解く**「裁量」**の力が、トレーダーとしての格を分けるのです。

相場の「バイアス」を読み解く思考プロセス

動画の後半で展開されるプロの思考プロセスは、まさに芸術的なまでに論理的です。注目すべきは、1時間足レベルで「最安値を作った起点」を価格が上抜けた瞬間です。この事実をもって、水島氏は「買い方向へのバイアスが強まった」と判断します。

特に印象的なのは、ボラティリティが収束(スクイーズ)していく局面の捉え方です。急上昇の後に、高値圏でフラッグのような形状を作りながらパワーを凝縮させていく。この「静寂」こそが、次なる爆発の予兆です。

  • スクイーズ(収縮):市場参加者が次の一手を計り、注文が溜まっている状態。
  • エクスパンション(拡散):フラッグをブレイクし、バイアスが確定する瞬間。

雇用統計のようなノイズの多い場面でも、結局はテクニカルな節目が機能するという事実は、私たちに「何を信じるべきか」を明確に示してくれます。自分自身でシナリオを描き、価格がその設計図通りに動くのを待つ。この「待ちの美学」こそが、プロへの最短距離なのです。

おわりに

FXの世界で自由を手にするために必要なのは、聖杯を探すことではありません。水平線とダウ理論という、シンプルでありながら深遠な武器を研ぎ澄ますことです。上位足で大局の流れを掴み、注文が渦巻く「起点」を見極め、自らのルールに従って静かに引き金を引く。

このプロセスを繰り返すうちに、混沌としていたチャートは、明確な意図を持った構造物へと姿を変えるでしょう。まずは動画を繰り返し視聴し、自分自身のチャートに一本の線を引くことから始めてください。その一本の線が、あなたの投資人生を劇的に変える羅針盤となるはずです。

フル動画を視聴して、どの解説が一番自分のトレードに響くか確かめてみてください。