はじめに
FXで試行錯誤を繰り返し、ようやく安定して勝てるようになった。純粋な喜びに満たされるかと思いきや、心の中に芽生えるのは「また負け始めたらどうしよう」「ロットを上げるのが怖い」といった、新たな不安や恐怖。これは、多くのトレーダーが経験する成功のパラドックスです。
この現象は、トレーダーの心理的進化における重要なステージを示しています。テクニカルな能力を習得した先には、成功への恐怖、感情的な崩壊のリスク、そして自己認識を通じた真の熟達という道のりが待っています。
FXトレーダーの水島翔氏が自身のYouTubeチャンネルで公開した動画は、まさにこの上級者向けの心理的な段階に焦点を当てています。これは単なるアドバイスの紹介ではありません。成功を収めたトレーダーが直面するメンタルの課題を乗り越えるための、実践的な「精神的フレームワーク」を提示するものです。
利益が出始めた途端に襲ってくる「ロットを上げる恐怖」
勝ちパターンが定着すると、皮肉にも新たな形の麻痺状態が生まれます。それが「スケールアップへの恐怖」です。動画の最初の質問者は、まさにこのジレンマに陥っていました。「最近勝てるようになりpipsも取れているが、ロットを上げるのが怖い」。
水島氏は、この恐怖をごく自然な心理的ハードルだとし、その解決策として「感情の鈍化(Emotional Desensitization)」とも言えるアプローチを提案します。それは、ロットを急にではなく、段階的に引き上げていくことです。彼のロジックは明確で、目的は大きくなる金額に対する精神的な耐性(「お金に対する体制」)を徐々に構築し、ロットを上げた際に自分の「感情の変化を試す」ことにあります。
いきなり金額を10倍にするのではなく、まずは2倍、3倍にしてみる。この丁寧なステップを踏むことで、感情に振り回されることなく、冷静な判断力を維持したまま、より大きな利益を狙う自分へと成長させることができるのです。
「いきなり 上げ ず に 徐々 に 上げ て いく…1 pips 動い て 200円 300円 くらい で 一旦 感情 の 変化 を 試し て その 程度 の 上げ 方 で いい か な と」
負けが続くと現れる「取り返したい病」を克服する”セーブポイント”という考え方
次に、利益を出せる手法を持ちながらも、連敗すると「取り返さなければ」という焦りからリベンジトレードの悪循環に陥る問題です。これは、トレーダーにとって最も破壊的な精神状態の一つと言えるでしょう。
この深刻な課題に対し、水島氏は「セーブポイント」という強力な心理的リセットプロトコルを提唱します。これは、自分が最も冷静かつ合理的なトレードができていた時の状態を、具体的な形で記録し、精神的な拠り所として保存しておくという考え方です。
その方法は極めて実践的です。成功トレードについて、環境認識、エントリー根拠、ルール、そして「その時の感情の変化」に至るまでを、自分自身で解説する動画を撮影します。「ちょっと照れるかもしれないけど」と水島氏が言うように、自分の声を録音することが重要です。この記録は単なる思い出ではありません。感情の渦に飲み込まれそうになった時、自分自身の声で語られる客観的な分析は、疑うことのできない「自分自身の能力の証明」となり、冷静な状態へと引き戻すための強力な錨(いかり)となるのです。
「うまく いっ て い るっていうところをしっかり 記録 と し て 残し て おく…それ が セーブ ポイント に なる ん で。それ に 戻れる よう に し て おい て 欲しい」
FXで本当に難しいのは、自分自身の心とどう向き合うか
動画全体を貫くテーマは、FXが最終的には「自分自身との心理戦」であるという事実です。水島氏が指摘するように、テクニカル分析や手法を学ぶことは最初のステップに過ぎず、本当に長く続く挑戦は、自分自身の心をいかに管理するかという点にあります。
前述した「ロットを上げる恐怖」も「リベンジトレード」も、症状は違えど根源は同じです。それは、論理的なはずのトレードプロセスに「恐怖」や「焦り」といった感情が介入し、判断を歪めてしまうこと。この自分との戦いを乗り越えて初めて、トレーダーは次のステージに進むことができるのです。この手法は、感情的な反応状態から客観的な自己分析へと意識を強制的にシフトさせる、強力な認知リフレーミングと言えるでしょう。
「ただ こっから 先 が やっぱ 自分 と の 戦い で も ある し…こっから もう 自分 と の 戦い に なっ て き ます」
どんな手法にも共通する、忘れてはならない「俯瞰する視点」
水島氏のアドバイスは、心理的な側面に留まりません。彼は、特にロットを上げることを恐れていた最初の質問者(スキャルピング手法のトレーダー)に対し、その心理的アドバイスを支える極めて重要な戦略的リスクを指摘します。それが、相場全体を鳥のように見渡す「俯瞰する視点」の欠如です。
彼は、短期足のスキャルピングでどれだけ成功していても、長期足の重要なサポート・レジスタンスライン(節目)といった市場全体の文脈を見失っていると、その手法が突如として機能しなくなる危険性を警告します。つまり、トレーダーの連勝は、大きな「節目」に到達した瞬間に終わりを迎える可能性があるのです。
この「俯瞰する視点」は、単なる一般的な心構えではありません。それは、自分の手法がいつ機能しなくなるかを予測し、感情的なトンネルビジョンを防ぐための具体的な戦略です。この広い視野を持つことで初めて、トレーダーは自分の手法に対する本質的な自信を深め、ロットを上げることへの恐怖を乗り越えることができるのです。
「単に ね、もう 目的 手法 だけ を 信じ て やっ て くっ て より か は こう ね、常 に 俯瞰 する と 意識 し て おい て 欲しい と 思い ます」
おわりに
水島氏の動画が示すのは、FXで勝ち続けるトレーダーが辿る心理的進化の道のりです。彼が提示したメンタルモデルは、以下の3つに集約されます。
- 感情の鈍化: ロットは急がず、徐々に上げて「お金への耐性」を育てる。
- 心理的リセット: 最高の状態を記録した「セーブポイント」に立ち返り、感情の暴走を食い止める。
- 戦略的俯瞰: 市場全体を見渡す視点を持ち、手法の限界を予見して心理的な安定を確保する。
FXにおける成功とは、一度到達すれば終わりというゴールではありません。市場と、そして何より自分自身の心と向き合い続ける、終わりなき旅路と言えるでしょう。
今回ご紹介したフレームワークについて、水島氏自身の言葉でより深く理解したい方は、ぜひ元動画を視聴されることをお勧めします。

