1250万円を投じた夢の城。なぜ彼は、愛したキッチンカーを手放すのか?

水島 翔/FXトレーダー

はじめに

誰もが一度は、情熱のすべてを注ぎ込むような「夢のプロジェクト」に憧れたことがあるのではないでしょうか。寝食を忘れ、こだわりを詰め込み、一つの形にしていく。今回ご紹介するYouTube動画は、まさにそんな夢を体現した一台のキッチンカーと、そのオーナーの物語です。

1250万円もの費用をかけて作り上げたこだわりの城。その夢は、一本の映画から始まりました。実は一度、ある企業との売却交渉が進んでいましたが、直前で破談に。そして今、この夢の城は新たな乗り手を探しています。これは単なる車両売却の話ではありません。一人の男が夢を追い、作り上げ、そして手放す決断に至るまでの、心揺さぶるストーリーです。

映画『シェフ』から始まった、夢のキッチンカー

この壮大なプロジェクトの原点は、映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』でした。作中で主人公が息子と共にキッチンカーでキューバサンドを売り歩く姿に、オーナーの水島さんは深く感銘を受けます。

驚くべきことに、彼は飲食業界での経験が全くなかったにもかかわらず、「自分もこれをやりたい」と決意。その情熱はアイデアを行動へと素早く変え、構想からわずか半年でキッチンカーをオープンさせました。映画が与えたインスピレーションの強さが、彼の言葉から伝わってきます。

シェフっていう映画…レストランのシェフが独立してキッチンカーを取得して息子と一緒にねキッチンカーでキューバサンド売り歩くっていう映画なんだけど…それを見て感化されて僕もこの車でSNSで集客してキュ馬サンド売りたいなと思ってスタートしたのがこれなん

こだわりが凝縮された、走る城塞

このキッチンカーの価値は、その背景だけではありません。ベース車両は、シボレーの「ステップバン P30」。もともとはオクラホマの空港で使われていたため走行距離が少なく、状態が良いという奇跡的な一台です。日本ではほとんど流通しておらず、所有者が手放すことは滅多にない希少なモデル。なぜなら、今同じものを作ろうとしても、同じ値段では絶対に作れないからです。

製作当時の費用は1250万円。しかし、近年の物価高騰により、現在同じ仕様で製作すると1500万~2000万円はかかると言います。一度は風で壊れ、40万円かけて付け替えたというオーニング一つをとっても、その投資の大きさが窺えます。全長7m、高さ3m超の巨大なボディはイベント会場で圧倒的な存在感を放ち、内部には給水200L・排水400Lの巨大タンクや保健所の規定をクリアする足踏み式ポンプ、強力な換気扇が2基も備わっています。まさに「走る城塞」と呼ぶにふさわしい一台です。

利益よりも「本物」を。食への哲学

このキッチンカーが多くの人を惹きつけた理由は、そのビジネス哲学にもあります。オーナーは短期的な利益よりも、本物の品質とブランディングを最優先しました。

その象徴が「原価率45%」という驚異的な数字です。飲食業界の標準が30%と言われる中で、これは異例の高さでした。注文を受けてから5分かけて作るこだわりのハンバーガーは、時に30分待ちの行列を生みましたが、それは利益や効率よりも「バーガーでブランドを作りたかった」という戦略的な判断でした。

飲食業界で言うとちょっとありえないくらいの原価率で45%とかだった材料費が。本来30%ぐらいに抑えなきゃいけないところを45%にしちゃったから

一方で、自家製のバナナジュースやレモネードは、その美味しさから「バカ売れ」状態に。急遽専用のタペストリーを作るほどの人気を博し、こだわりのハンバーガーがブランドを築き、手軽で美味しいドリンクがビジネスを支えるという、理想的な形を生み出しました。

この一台に、次の夢を乗せる人へ

今回、このキッチンカーは税込1000万円で売りに出されます。この価格には、大型冷蔵庫や業務用厨房機器はもちろん、お店の顔となるタペストリー、そして成功を収めたメニューのレシピまで、すぐにビジネスを始められるすべてが含まれています。

しかし、オーナーには一つだけ重要な条件があります。それは「誰にでも売るつもりはない」ということ。彼は、次にこの車を受け継ぐ人の情熱や事業計画をしっかりと聞いた上で、託す相手を決めたいと考えています。さらに、この巨大な資産を活かすためには、相応の体力が必要だとも語ります。「ある程度事業を持ってて資金的にもインフラ的にも体力のある人にお勧めかな」と。これは夢の継承であると同時に、極めて現実的なビジネスのバトンパスなのです。

正直僕は誰にでも売るつもりはなくてうん どういう思いでやるのかどういった授業展開をしていくのか…このトラックをどう活用するのかっていうの聞いた上でまあの金額的につけば譲ろうかなと思います

おわりに

この動画は、ハイスペックなキッチンカーの紹介にとどまりません。一本の映画から生まれた夢が形になり、多くの人に愛され、そして次の担い手を探すまで――夢のライフサイクルそのものを描いた、感動的なドキュメンタリーです。

なぜ彼がこれほど愛した城を手放すのか、その明確な理由は語られません。しかし、その答えを探すこと以上に、情熱を注いで何かを創り上げ、そしてそれを受け継いでいくことの尊さが、この物語からは伝わってきます。ぜひ動画本編で、この「走る城」に込められた熱い想いのすべてをご覧ください。